シンポジウム

SYMPOSIUM

これからのキャリア・カウンセリングに期待されるもの。

これからのキャリア・カウンセリングに期待されるもの。

~技術革新、社会正義、2020以降の社会を見据えて~

 現在、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて,私たちの職場環境、日常生活も大きく変化し、在宅勤務、オンライン授業、および、オンラインカウンセリングの浸透等、働く環境や教育環境の大きな変化に直面し、「With・コロナ」の2020以降の社会を見据えて、価値観の転換を迫られている状況です。
 この節目となる2020年、今後、世の中から期待されるキャリア・カウンセリングはどのようなものなのか、学会が果たせる役割は何なのか等、シンポジウムに参加される皆様と一緒考える機会にしたいと思っております。今回のシンポジウムでは、ナラティヴ・セラピーの実践者、社会正義のキャリア支援を提唱する研究者、オンラインカウンセリングのインフラを構築中の若手起業家、そして、キャリア・カウンセリングを政策で支援する行政の代表者にご登壇いただき、多面的に議論していただくことで、これからのキャリア・カウンセリングに期待されるものを展望します。当日、会員の皆様と将来を見据えた熱い議論ができればと思います。

シンポジスト

国重浩一(くにしげ・こういち)
ナラティヴ実践協働研究センター
<メッセージ>
ナラティヴ・セラピーの実践に取り組んでいます。その中で、カウンセリングの理論的な側面を積み上げていくことの大切さがある一方で、どのように相手とやりとりするのかという実際的な技術を磨いていくことの重要性を感じています。カウンセリングは、勉強する、教わるということだけでは不十分で、練習、または訓練していくことが必要なものであるということです。そして私たちの姿勢は、さまざまな考え方や価値観を反映するものでもありま す。クライアントの発言の何を支持し、何を支持しないのかということが、私たちの姿勢に表れてしまうのです。そして、今回の大会のテーマである「社会正義」ということにつながるのですが、その姿勢の中でどのように社会正義に取り組むのかが見えてしまうのです。技術的な側面でいえば、若い頃科学に興味を持ち、電子工学を学んだものとして、コミュニケーション手段の多様化に興味を持っています。一方で、興味があるからこそ言えるのですが、このような技術に過大な期待もしていません。実際的に使える一つの手段として、利用していきたいと考えています。
私が関わっているナラティヴ実践協働研究センターのワークショップでは、今年3月初旬からオンライン化を進めてきていますが、オンラインだけにすることはないと考えています。会場に集まって実施することをなくすことはないでしょう。しかし、可能なところでは、オンラインとオフラインを併用して、つまりハイブリッド形式を採用したいと考えています。
<プロフィール>
1964年、東京都墨田区生まれ。ニュージーランド、ワイカト大学カウンセリング大学院修了。臨床心理士、ニュージーランド、カウンセラー協会員。鹿児島県スクールカウンセラー、東日本大震災時の宮城県緊急派遣力ウンセラーなどを経て、2013年からニュージーランドに在住。同年に移民や難民に対する心理援助を提供するための現地NPO法人ダイバーシティ・カウンセリング・ニュージーランドを立ち上げる。2019年には東京に一般社団法人ナラティヴ実践協働研究センターの立ち上げに参加。著書に、『ナラティヴ・セラピーの会話術』(金子書房)、『震災被災地で心 理援助職に何ができるのか?』(編著)、『どもる子どもとの対話』(共著、金子書房)。訳書に、『ナラティヴ・アプローチの理論から実践まで』、『ナラティヴ・メデイエーション』、『心理援助職のためのスーパービジョン』(ともに共訳)など。

下村英雄(しもむら・ひでお)
労働政策研究・研修機構キャリア支援部門 主任研究員
<メッセージ>
新型コロナウィルスによる社会的な大混乱は、2020以降のキャリア環境の決定的な変化を我々に予感させました。技術革新によって遠隔地と容易につながることが可能となり、今後、新たに求められる働き方も、それを支えるキャリア・カウンセリングも自ずとその形を変化させると想定されます。その際、現在、主流のナラティブ・コンストラクティブな動向と、それと軌を一にする形で進展してきた多文化・社会正義の動向は表裏一体となり、相補いながら、これからのキャリア・カウンセリングの将来像を取り結ぶ可能性があることを示したいと思います。
<プロフィール>
労働政策研究・研修機構キャリア支援部門主任研究員。筑波大学大学院博士課程心理学研究科修了。博士(心理学)。主著に『社会正義のキャリア支援-個人の支援から個を取り巻く社会に広がる支援へ』(図書文化社)、『成人キャリア発達とキャリアガイダンス:成人キャリア・コンサルティングの理論的・実践的・政策的基盤』労働政策研究・研修機構(平成26年度労働関係図書優秀賞)、『キャリア・コンストラクション ワークブック:不確かな時代を生き抜くためのキャリア心理学』(金子書房)、『ヘルピング・スキル第2版-探求・洞察・行動のためのこころの援助法』(金子書房)など。産業カウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士。

渋川駿伍(しぶかわ・しゅんご)
株式会社Kakedas 代表取締役 CEO
<メッセージ>
日本をはじめとする先進国では、これまでの経済成長によって多くの恩恵を受けてきました。
昭和から平成へと駆け抜けた激動の時代。その経済発展にともなって、水道/ガス/電気などハードのインフラは完全に整備されました。ただ、その一方でソフトのインフラは、誰も設計していなかったのです。その歪みは、ゆっくりと、だけど確かにじわじわと。この国を追い詰めていることは事実です。
これからは、新しい時代の幕開けです。
令和のいま、日本に必要なのは相談のインフラです。
この国に適切な対話空間を設計し、人生の主人公を増やすことこそが、私たちKakedas(カケダス)の使命です。次の時代の当たり前をつくる国家資格キャリアコンサルタントマッチングサービス「Kakedas」を、これからよろしくお願い致します。
<プロフィール>
オンラインキャリア相談室「Kakedas」、対話型パーソナルサービス「Kakedas.LIFE」などを運営する株式会社Kakedas代表取締役CEO。
人生のミッションは「社会のワクワクの総量を増やす」こと。1998年生まれの22歳。
高校時代は地元長野県で高校生カフェを創設。卒業後は1年間のギャップイヤーを取得。日本をヒッチハイクで周り、お金を使わない実験やインターンシップを経て、日本ポップコーン協会設立。
同年、MITのMicroMastersプログラムに進学。

増田保美


増田保美(ますだ・やすみ)
厚生労働省 キャリア形成支援室 室長補佐
<メッセージ>
新型コロナウイルス感染拡大防止や働き方改革などの広がりにより、個々人のキャリア自律の必要性は、より一層高まっていくものと考えます。こうした中で、キャリア支援の専門家であるキャリアコンサルタントが果たすべき役割やキャリアコンサルタントに寄せられる期待も更に大きくなっていくものと感じています。オンラインによるキャリア相談も含め、キャリアコンサルティングが労働者の身近な社会インフラとして日本社会に根付くように、必要な施策を今後とも進めて行きたいと考えています。
<プロフィール>
福岡県出身。平成15年に厚生労働省に入省。ハローワークの業務指導、障害者雇用対策、地域雇用対策などを担当。平成31年4月からキャリア形成支援室長補佐。
最近の自身のキャリア形成上の課題は、仕事と子育てとの両立。趣味は約30年ぶりに再開したピアノ。某TV番組「空港ピアノ」にあこがれて、格好良い1曲を弾けるようになるため鍛錬中。

司会
廣川進

廣川進(ひろかわ・すすむ)
法政大学キャリアデザイン学部 教授、当学会会長)
<メッセージ>
昨年、私がこの学会の会長をお引き受けしたときから心がけていることは「イノベーション」です。予定調和や安定の対局にあり、そこには様々な抵抗や葛藤が生まれますが、これからの時代を切り開くためにはそこを超えていくしかないのです。これまで、年齢差40歳もあるシンポジストが出るシンポがあったでしょうか。異質なものの摩擦からうまれるクリエイティブでイノベイティブな討議をお楽しみに!
<プロフィール>
1959年生まれ。法政大学キャリアデザイン学部教授。大正大学大学院博士課程(臨床心理学専攻)修了(文学博士)。著書に『失業のキャリアカウンセリング』(金剛出版)、『成人発達臨床心理学 個と関係性からライフサイクルを観る』共著(ナカニシヤ出版)、『統合的心理臨床入門』(共編著)ミネルヴァ書房など。公認心理師、臨床心理士、シニア産業カウンセラー、2級キャリア・コンサルティング技能士。日本産業ストレス学会理事。